私には双子の幼馴染みがいた。
兄はグリード、弟はシノギ。
顔は似ていたけれど性格と魔力は全然違う双子。
私は何時もシノギと共に過ごしていた。
魔力はグリードに比べたら弱いけれど、何時も微笑みを絶やさず優しい性格。
グリードも何時も微笑んでいたけれど…何処か怖かった。
双子は元々一人分の魔力を分断され産まれると私達の世界では言われている。
そして、双子のどちらかが死ねば、その魔力は生き残った方に戻るという。
「…そのうちグリードに殺されるんじゃないんですの?」
「え?いくら兄さんでもそこまではしない…といいなあ。」
暢気に笑いながらシノギは答えた。
「グリードってば他者の魔力を奪う術を編み出したとか言われてますわよ。
前回の竜族との争いの時も対峙した相手のを根こそぎ奪ったとか…噂ですけど。
ただでさえ他者より高い魔力を持って生まれたのに。強欲ですわね、貴方のお兄様は。」
「大丈夫だよ。兄さんはたしかに強欲ではあるけれど…兄弟だし。」
「その根拠のない自信は何処から…。私が心配して差し上げてるのに!もう知りませんわ!」
「戻る?送ろうか?」
「私は怒ってますの!べー!」
あっかんべーをしてシノギを置き去りに家へと戻る。
そんな私の後ろ姿が消えるまでシノギは微笑んで手を振ってくれる。
私とシノギが過ごした日々は、ほぼ毎日それが繰り返された。
次の日もその次の日も、ずっとずっと…。私はそれが心地よかった。
ただ、シノギと何気ない日々があればよかった。
なのに、それが、あの日を境に消えてしまった。
再度起こった竜族との争いが終結した後もシノギは帰ってこなかった。
私は泣きながら探し回った。
シノギが何時も居た場所、好きな所、何時も一緒に過ごした庭…そこにはグリードが立っていた。
「グリード!シノギは何処ですの!?」
「これはコリトゥナ嬢。愚弟の居場所?私こそ知りたいものだ。」
微笑を浮かべグリードは答えた。
「いるはずの場所を探しても何処にもいないだなんておかしいですわ!…殺したの?シノギを殺したの!?」
「物騒な事を仰る。私がどうして弟を殺すのかね?」
「双子だからですわ…。片割れが死んだら魔力は片割れに戻ると言い伝えがございますもの。
強欲な貴方ですもの…!違いますの?」
きっとグリードを睨む。
「ご想像にお任せしよう。君は死霊使いだろう?死んでるというならばシノギの霊魂を収集しなくていいのかね。
私は忙しいのでね。失礼する。」
「グリード…!」
グリードは笑みを絶やさないまま一瞬にして姿を消してしまった。
…そうだ、私は死霊使いだ。
シノギが死んでいるのならば、魂を早急に探し出さなくてはならない。
「他の同業者に奪われてたまるものですか…。みつけたら生きていようが死んでいようが捕獲して説教してあげるんですから…!」
泣く暇があるなら探そう。
グリードに言われて気付くだなんて屈辱ですわ…。
コレクションである手練れの魂を二人連れて私はシノギを探す旅にでた。