和菓子屋天命でいなり寿司を食す大柄な客が一人。
そこに店主の姪が近付き声をかけた。
「お食事中すみません。百夜さん。よければ夏休みの自由研究に協力お願いします。」
「ほお、学生は大変だの。よし、協力しよう。」
いなり寿司を頬張る手を止め百夜は答えた。
それに流華はぺこりと頭を下げる。
「ありがとうございます。では早速ですが結婚してますかしてませんか。」
「ぶはっ!!!」
隅っこで大福を頬張っていた流音が噴き出した。
「る…るかちゃそんなの自由研究にしてるの…?」
「べ、別に流華が何を題材にしようが勝手でしょ…。」
真っ赤になりながら双子の兄に反論する。
「はー、面白い質問だのう。」
くすくすと笑いながら百夜は答える。
「うちの伯父さんまだ未婚で。同じくらいからそれ以上の人はどうなのかなって思いまして。」
「ふむ、儂は結婚しとるよ。子どもも3匹おるよ。」
「え!百夜さん既婚だったんですか!?」
流華より先に流音が反応する。それに百夜はカラカラと笑いながら
「んー?儂が結婚してたら変かの?」
「指輪してないし、何時もふらふらしてて(失礼)神出鬼没だし色々謎の人だからビックリしちゃって。」
「お主は正直じゃのう。儂は人間ではなくキツネだからな、お主らのように結婚しても指輪はせぬし、仕事も特殊だかしとるよ?」
「へー!その特殊なお仕事って何してるんですか?」
「んー、まあお主らの世界ならば警察に捕まるお仕事かの?」
にっこり笑っていなり寿司を頬張った。
「え~…嘘か本気かわからない…!」
「んふふ。で、それだけかの?流華。」
「…!あと…奥さんについて…?」
「聞きたいか!零さんのことを聞きたいのか!」
少年のように目を輝かせ聞かせたくて堪らないという風に百夜は流華を見た。
その表情に一瞬戸惑うも、他人の恋愛事情について興味がある流華は
「はい。聞かせてください。」と答えた。
この日この時から暇があれば百夜が流華に惚気話を聞かせ、それを興味深く聞く流華という関係が出来上がるがそれはまた別の話。